カウンセリングサロンArk(アーク)杉並のBlog

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『学校に行く意味・休む意味 不登校ってなんだろう?』の読書メモ

 どうも、最近めっきり寒くなってきましたね。カウンセリングサロンArk杉並カウンセラーの加藤です。

 

 前回は服についての悩みを書いていましたが、なかなか決まらないものですね。まだまだカタログとにらめっこする日々が続きそうです。

 

 さて、今回はタイトルにあるように滝川一廣先生の『学校に行く意味・休む意味 不登校ってなんだろう?』という本を読んだので、その感想というかメモのようなものです。

 

 この本ではまずは不登校の定義から始まり、教育の歴史を紐解き、日本の公教育制度の始まりを振り返ります。そして不登校の歴史と取り組みから現在の子どもたちの学校に行く意味・休む意味を捉えようというものです。この本出版されたのは2012年のことですが、今にも通用する部分もあると思っています。

 

 しかし、不登校の直接的な要因については個々人によって理由が違ってきますので、不登校という現象を社会的な側面から捉えるものとなっています。

 

 ちなみに学校では年間30日以上の欠席が長期欠席とされ、その中でも病気や経済的要因によって欠席した者を除いたものとなっています。

 そのため、滝川先生は本書の中で、不登校について、

学校教育といういとなみにはらまれるなんらかの要素との関連において長期欠席が生じ、そこに悩みや不安や葛藤が生まれているもの、それを「不登校」と呼ぶのです。

第1章 なにを「不登校と呼ぶか」p.31

  と述べています。引用の仕方が合っているか不安ですが、進めていきます。

 

 

 滝川先生は現在の不登校について、社会的な側面からの要因を3つほど述べています。

1.学校の<聖性>の喪失

2.学校と仕事との接続の弱まり

3.学校以外の居場所の喪失

 

 元々学校で学ぶということは、身を立てるために必要なことでした。学校で学び、学歴を得ることにより、身分に関係なく農業や漁業などの第一次産業よりも賃金を得られる仕事に就くことができるようになりました。そのための学校という場には特別なもの、神聖なものとしてあったわけです。しかし、時代が進み、高校の入学率が上がっていくにつれて学歴の価値が下がっていきました。産業構造の変化もあり、個人意識が高まる中で画一的な指導に疑問が持たれることになったり、高校受験者の数が増え、そのストレスによって不登校が生まれるのではないかという論が台頭してきたり、また、いじめなどの問題により、学校がバッシングを受けるようになったりすることによって、学校という場の<聖性>がなくなっていってしまった、そのために子どもを登校させる力や枠として子どもの逸脱を抑える力が弱まってしまったというわけですね。

 

 産業構造の変化は私たちの働き方にも影響を与え、第三次産業であるサービス業が主流となりました。それに伴い高度消費社会が訪れます。それが故に私たちの周りには物があふれ、これまでの勉強することで身を立てる価値観が一般的ではなくなりました。また第二次産業領域では学校でのアカデミックスキルが直接仕事に結びつきましたが、学校で勉強することの意味が見出せなくなっていったとのことです。勉強と未来に役立つものであるという接続が今や弱くなってしまっています。また、例え勉強をして職に就いたとしても現在は、非正規労働者が増えたことにより働いても豊かになれるわけではないという社会構造になってしまっているためにますます、学校での勉強が豊かな未来につながっているという構造ではなくなってしまっているんですね。

 

 最後に、現在では学歴の価値が下がり、それ故に取得の圧力は高まっています。そのためそこからこぼれ落ちないために学校に行く圧力は高まっていると言えます。しかしながら、それは今では一種のプールの役割を果たしています。勉強の苦手な生徒が全員就職を目指してしまうと、大変な失業問題になってしまうからと著者は述べています。元々公教育の目的として、都市化と職住分離によってちまたにぶらぶらした若者を囲い込むというものがあり、その延長としてのものが残っているのではないかとのことです。つまりある年齢の子どもたちには学校以外に行く場所がなくなってしまっているのです。

 

 そういった中で、子どもが目的や価値を見出せないまま学校に通うことにより、あらゆる現実でのつまずきが不登校の原因になってしまう状態になっていると著者は本書で述べています。

 

 

 

 2012年の本ですが、今でも通用する部分はあるかなと実感としてはありました。日常のあらゆるつまづきが不登校につながってしまう可能性があるというのは、現代の不登校問題の難しさを表しているように思います。

 

 

 気になりましたら是非本書をお手にとってみて下さい。

 

 

 

 

 

 

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